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案件進行におけるコミュニケーションについての自戒

  • 投稿日:
    2023/06/07
  • 更新日:
    2023/06/07
  • 読了時間:
    7分程度
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こんなことないですか?

  • 思ったもの(クオリティ)が上がってこない
  • いつもスケジュール通りにおさまらない
  • 予期せぬ不具合が後々発覚する 等々

理由はプロジェクトごとに様々だと思いますが、経験上多くの割合でコミュニケーション不足が要因になっていると感じています。

コミュニケーションと一口に言っても人によってイメージに差があろうかと思いますが、本記事では「案件進行におけるコミュニケーション」としていますので、案件外の雑談や飲み会などで親睦を深めるといった意味合いではありません。


さて、ここで過去に実際にあった事例をあげます。

アラート問題

社内でも腕利きのエンジニアにサイト構築を依頼したにもかかわらず、スケジュールが遅延しそう、上がってきたものが思っていたものと違っていた

ある日このようなアラートが担当ディレクター以外からあがってきたことがありました。

私自身としては日ごろから「何かあったらすぐアラートをあげてね」と伝えていたにもかかわらず、
なぜアラートがディレクターから上がってこなかったのか? エンジニアは忙しかった? 手を抜いた?
などと想像しつつも、プロジェクトが佳境に入っていたのでこれはまずいということで巻き取ってクロージングさせたのですが、巻き取りをした際にディレクターの指示内容をヒアリングした結果、仕様面の多くがエンジニアに丸投げだったことがわかりました。

またそもそもアラートが本人から上がってこなかった理由は、全体のスケジュールはあるものの、ページ単位や初稿提出、先方確認などの細かなWBSが存在しない状態で進行しており、現在の進捗が遅れているのか否かが判断がつかない状況で、定期的な進捗確認もしておらず、現状がどれくらいまずい状況なのかが見えていない状況だったため、特にアラートをあげるタイミングではない、と判断していたようでした。
ただ、残タスクと納期までのスケジュールを改めて逆引きしていくと、とても間に合うスケジュールではなかったため、先方にお詫びの上、改めてスケジュールを引き直しを実施しました。

仕様面に関しても担当していたのがキャリアのあるエンジニアだったこともあり、下手に指示を出すよりはお任せした方がよいと判断したとのことでした。

コーディングであれば、この要素はリキッドレイアウトなのか、ブレイクポイントは何pxなのか、どのようなアニメーションになるのか、Wordpressであればこの要素はカスタムフィールドで入力できるように、等々、必要に応じて資料を交えて認識合わせをしてしかるべきですが、それが行われなかったため、どのように構築すべきか正しい判断ができず、エンジニア側もディレクターに細かく確認することなく独自の裁量で構築した結果、想定していた内容に大きな乖離があったのが要因でした。

仮にこのようなやり方でうまく納品できたとしても、ディレクターが仕様を理解しきれておらず、後々何らかの問題が出た際に責任の切り分けがうまくできず、非がないにもかかわらず障害対応を行う必要が出てしまう、といったケースが容易に想像できます。

お互い思っているものがあるなら伝えないとエスパーじゃないんだから・・・と、第三者視点で見ると当然感じるようなことも、当事者になると案外できなかったりすることがあるので、スタッフ間の仕様面の認識合わせはしっかりと時間をとって実施するように気を付けたいですね。

その際、専門知識の問題で「下手に指示を出すよりは・・・」と感じるケースはあるかもしれませんが、クライアントの想いを共有したうえで最適なものを提供する、ということを念頭に、あまり作りこみすぎた指示書をはじめから用意するのではなく、ラフのワイヤーフレームに対してこうあってほしい内容を記載したうえで、スタッフ間と共有を図り、より良いアイデアが出た場合は速やかにアップデートしていく、ということで認識合わせをしながら、ベストなものを提供するサイクルをワークフローとして確実に履行する習慣づけが重要かなと思います。

そのうえでこのケースのように上長は本人が問題だと感じていなければアラートは上がってこない、ということを肝に銘じて、必要なコミュニケーションが履行されているか気を配っていきたいところです。

伝書鳩問題

現行のページを2つに分けてほしいそうです。
工数の見積をお願いします。

クライアントと直接やり取りするディレクターは、社内と社外をつなぐ潤滑油のような存在だと思っています。
そんなディレクターがクライアントからの仕様変更の要望をそのままデザイナーやエンジニアに連携しつづけたとしたら、それぞれのスタッフはどう思うでしょうか。

ページを2つにわけるということは次ページへ遷移するための何らかのナビゲーションが必要で、そのあたりはどうなるのか、単純に分けるだけなのか、そもそもなぜページを分ける必要があるのか。
この辺りの情報がない状態の指示では正しい工数も出せないですし、非常にモヤモヤするのではないでしょうか。

仕様の変更の場合であれば、なぜ変更する必要があるのか、スケジュール内で吸収できる内容なのか、あるいは追加費用が発生する作業なのか、その変更に合理性はあるのかなど、変更の意図について認識合わせをしたうえで、そもそもそれ以外にもっと良い方法がないのか含め議論し、ある程度の納得感を持って臨みたいものです。

当人にとっては必要なコミュニケーションがとれていると思っているかもしれませんが、
「何をしないといけないのか」よりも「なぜしないといけないのか」の方が重要になるケースは往々にしてあるのでそこをケアせずに右から左に伝書鳩をするだけになってしまうと、ディレクター不要論が社内外からささやかれてしまうかもしれません。


「いい感じ」の尺度は人によりばらつきが出ます。
「いい感じ」を決めるのはディレクターの役割に他なりませんのでそこを製作スタッフに丸投げしないように、「メールやSlackの文章はできるだけ簡潔に」などといわれることは多いですが、指示の意図については意識的にできる限りしっかりと伝えてあげた方がよいのではないか、と思いますね。